7月14日の日記から
「おお!寒い!見渡す限り、真っ白だよ!」起きてくるなり、ポールが言った。昨夜は冷え込んで、窓まで凍った。フェンスに干していた洗濯物も、凍ってしまい、ポキリと半分に折れてしまいそうだった。
「さて、今日は誰が誰を殺してるかな?」ポールが、コンピューターをつけて、冗談を言う。ネットを通して飛び込んでくるニュースは、まるで、ここでの暮らしとは、別世界のことに思える。
「あ、ちょっと、これ、見て!この足!」しばらく、ニュースをチェックした後、ポールが叫んだ。スクリーンを見ると、フラミンゴの赤ちゃんの写真が映っていた。
「わお!フラミンゴの赤ちゃんって、足は大人と同じぐらいに大きいんだ!」と私が言うと、「鳥のホビットだね!」と、ポールが笑った。
「なんで、こんなことが!?」と驚嘆してしまうニュースが多い毎日だからこそ、笑いで一日を始めるのは、健康に良い!
さて、朝食は何にしようかなと考えていると、ポールが言った。
「今朝は、緑のものが食べたいなあ」
「緑のものって?」
「ケールとか、チャードとか、緑のものだよ。一体、どこへ行っちゃったの、緑の野菜は?」
「畑で凍ってるよ」私が、言うと、「あ、そう」と、ポールが、残念そうに頷く。
「すぐ、そこだから採ってくるよ」と、言うと、パッと、顔が明るくなった。
「庭に冷凍野菜があるっていうのは、便利だよね。たいていの人は、冷凍野菜がほしかったら、スーパーに買いに行かなくちゃいけないんだから。東京に住んでいたら、慌てて、冷凍野菜を買いに出て、氷に足を滑らせて、バスに轢かれちゃうかもしれない!」
早速、畑へ出て行って、ケールとチャードを採ってきた。野菜を洗うためには、外のバケツに貯めた雨水を使うのだけれど、今朝は凍っていて使えない。洗い場は外にあるので、前の晩に洗い場に汲んでおいた水にも、氷が張っていた。あまりにも水が冷たいので、家の中からお湯を持ってきた。今朝、ルマという、高温で燃える薪をストーブにくべておいたので、すでに、お湯が沸いていた。そのお湯を使って、野菜を洗い、オートミールを作った。
朝食の後、ポールは生垣(ヘッジ)の剪定をしに行った。家の前にある生垣が大きくなりすぎて、窓から見る景色が遮るようになってしまったので、かなり、刈り込まなければならなかった。庭仕事を楽しんでいるようで、鼻歌を歌っているのが聞こえた。
その間、私はランチの用意をした。薪ストーブでパンを焼き、バターナッツとビーツ、ニンジン、チロエ・ポテトのローストを作った。今シーズンは、バターナッツが大成功だった。去年作ったグリーンハウスで育てたのだけれど、これは、丘の斜面を掘り下げて作った半地下タイプなので、これまで作ったグリーンハウスに比べて気温が高く保て、夏野菜に最適だった。
「ポール、ランチができたよ!」ロースト野菜をプレートに並べ、ローズマリーとタイム、塩、オリーブオイルを振りかけ、ポールに声をかけた。
ポールは、窓際のテーブルに座り、野菜を口に運ぶ。
「うーん、美味しい!こういうシンプルなものを毎日食べたいんだよねー」と、嬉しそうだ。
すると、ポールが窓越しに、生垣を見ながら言った。
「こういう暮らしには、忍耐強さが必要だと、つくづく思ったよ。このヘッジ(生垣)を植えたのは、もう何年も前になるけど、ようやく今になって、薪として使えるくらいの大きさになった。自分たちで使う薪を全部、この方法で供給できたらいいよね」
「うん。まさに、投資。これって、ヘッジ・ファンド(生垣基金)だね」
「はは、本当だ!」
この土地を買ったとき、敷地内には、古い大きな木が2本あるだけで、植物は、ほとんど、生えていなかった。
「ここに、1000本、木を植える。そうしたら、他の植物や木々が、自然に蘇って来て、この場所は、ものすごくきれいになる」と、ポールが言った時、一体、どうやって、1000本もの木を植えるのだろうと思ったものだ。けれど、7年経って、植えた木は1000本以上になり、ポールが言った通り、何百本以上もの木々が自然に生えてきて、この土地は、本当に美しくなった。
木を植えることは、未来への投資だ。
私たちのヘッジ・ファンド(生垣基金)は、確実に増え、利回りもぐんぐん良くなっている!(笑)
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